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HSCを知っていますか?〜ひといちばい敏感な子ども〜

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私は幼い頃から敏感で繊細な子どもでした。自分にとっては当たり前だった感覚は、5人に1人が持っている生まれながらのもので「HSP(Highly Sensitive Person)」と呼ばれる気質だったのだということは、大人になってから知りました。

小学生くらいの記憶をさかのぼると、自分でも覚えている敏感さを物語るエピソードがあります。母に聞いても、赤ちゃんのころから敏感だったことが分かるエピソードを聞くことができます。

今後当ブログでも、当事者としてのエピソードを少しずつ紹介していきたいと思っていますが、この記事では、ひといちばい敏感で繊細すぎる気質の子ども「HSC(Highly Sensitive Child)」について知っていただけたら嬉しいです。

HSC(Highly Sensitive Child)とは

ひといちばい敏感で繊細な子ども

HSCとは、HSPの子どもたちを表す言葉で、生まれつきとても敏感な感覚、感受性を持った子どもたちのことをいいます。

そもそもHSPというのは、いまから約20年前に、アメリカの心理学者、エレイン・N・アーロン博士により発表された概念です。

このHSPという概念では、「この敏感さは、病気でもない、障害(※)でもない、単に生まれ持った気質によるものなのだ」としています。

気質というのは、生まれつきある遺伝的・生理的な特質であり、性格を形成する基盤ではありますが、性格とは違います。

生まれつき足が早い人がいたり、手先の器用な人がいたり、いい声で歌える人がいるように、とても敏感な感受性という気質を持った人がいるだけ、という考え方です。

HSCはまだいまひとつ知られていない

アーロン博士は、2002年に『The Highly Sensitive Child』というタイトルで、ひといちばい敏感な子どもたちの特徴や育て方を詳しく書いた本を出し、その中でHSPの子ども版のことを、HSCと呼びました。

こちらの本が、翻訳されて日本で出版されたのは2015年のことで、アメリカで刊行されてから13年後のことでした。

そのため、HSCという言葉が日本で一般的に知られるようになったのは、ここ数年のことだといえます。まだまだ日本では認知度が低く、「きっとこの子はHSCだろう」と思われるようなお子さんを持つ保護者の方ですら知らないということも多いのが現状です。

HSCは病名、診断名ではない

HSPやHSCは医学的な概念ではなく、あくまでも心理学的な、社会的なひとつのものの見方に位置付けられています。

病気ではないため、精神科や神経科、心療内科にかかっても、HSPやHSCだと診断されることはほとんどありません。HSPやHSCへの理解があるお医者さんもいますが、まだ概念を知らないというお医者さんがいるのも現状です。

そのため、「感覚過敏」という特徴で育てにくさを感じているのに診断名がつかない、または誤診されてしまうという経験をしている保護者の方もいるのです。

HSCかどうかを知るための、23のチェックリスト

次の質問に、感じたままを答えてください。子どもについて、どちらかといえば当てはまる場合、あるいは、過去に多く当てはまっていた場合には「はい」、全く当てはまらないか、ほぼ当てはまらない場合には「いいえ」と答えてください。

1 すぐにびっくりする はい・いいえ
2 服の布地がチクチクしたり、靴下の縫い目や服のラベルが肌に当たったりするのを嫌がる はい・いいえ
3 驚かされるのが苦手である はい・いいえ
4 しつけは、強い罰よりも、優しい注意の方が効果がある はい・いいえ
5 親の心を読む はい・いいえ
6 年齢の割りに難しい言葉を使う はい・いいえ
7 いつもと違う臭いに気づく はい・いいえ
8 ユーモアのセンスがある はい・いいえ
9 直感力に優れている はい・いいえ
10 興奮したあとはなかなか寝つけない はい・いいえ
11 大きな変化にうまく適応できない はい・いいえ
12 たくさんのことを質問する はい・いいえ
13 服がぬれたり、砂がついたりすると、着替えたがる はい・いいえ
14 完璧主義である はい・いいえ
15 誰かがつらい思いをしていることに気づく はい・いいえ
16 静かに遊ぶのを好む はい・いいえ
17 考えさせれられる深い質問をする はい・いいえ
18 痛みに敏感である はい・いいえ
19 うるさい場所を嫌がる はい・いいえ
20 細かいこと(物の移動、人の外見の変化など)に気づく はい・いいえ
21 石橋をたたいて渡る はい・いいえ
22 人前で発表する時には、知っている人だけのほうがうまくいく はい・いいえ
23 物事を深く考える はい・いいえ

【得点評価】
13個以上に「はい」なら、お子さんはおそらくHSCでしょう。しかし、心理テストよりも、子どもを観察する親の感覚のほうが正確です。たとえ「はい」が1つや2つでも、その度合いが極端に強ければ、お子さんはHSCの可能性があります。(出典:エレイン・N・アーロン著 明橋大二訳(2015)『ひといちばい敏感な子』)

ちなみに私は幼少期の特徴で考えると20個当てはまります。

5人に1人は敏感で繊細すぎる気質を持っている

HSPやHSCは、病気でも障害(※)でもなく、その人が生まれ持った気質のひとつです。

アーロン博士は、人種や民族に関係なく、どの社会にも15〜20%(ほぼ5人に1人)の比率でHSPがいると言っています。

ひとクラスが30人だとしたら、クラスに5〜6人はHSCがいるということになりますので、意外と多いのです。

しかし社会は、その他8割の大多数の非HSP(HSC)向きになっているので、敏感で繊細すぎる人にとっては適応するのが難しかったり、しんどくなったりすることがいろいろあります。

敏感さ・繊細さが持ち味になるように育てよう

敏感力・繊細力というポジティブな捉え方を

HSCという気質を持つ子どもと関わる時は、その気質をネガティブに捉えるのではなく「敏感力」「繊細力」というポジティブな力として捉えていきましょう。

私は両親から自分の敏感さを責められたり、繊細がゆえにできないことなどを無理にさせられたりした経験がなく、敏感さや繊細さを受け止めながら育ててくれたことに感謝しています。

私はもともと幼少期は、感受性が豊かで怖がりかつ心配性で、冒険できない性格でした。

しかし、おおらかで超楽観的かつ鈍感力が高い母の影響を存分に受けて育ったおかげで、親元を離れるころにはある程度、社会で生きるために必要な強さを持った人間になりました。

敏感や繊細だけがその子の性格じゃない

アーロン博士も、『ひといちばい敏感な子』のなかで「敏感でも、臆病になるかならないかは育ち方しだい」だと言っています。

HSCへの理解が進み、HSCが安心できる居場所や環境づくりができれば、どんな風に愛情を注いだらいいのかが分かれば、「HSCという気質=生きづらいもの」ではなくなり、いい持ち味、個性、魅力として育んでいくことができます。

親や周囲が育てにくいと感じている子どもが、HSCの気質を持つ子どもだからだと分かってあげられたり、子どものときから敏感さに対して望ましい対応ができていれば、その子の生きやすさは大きく変わります。

私自身も自覚したのが最近なので、中高生くらいで自覚していたらその後の生きやすさが少し違っていたかもしれません。

敏感すぎる子どもを育てる保護者の方へ

親がHSPであるか、またはそうでないか、によっても子育てで工夫できることが違ってきます。家族みんなでHSPのチェックテストをしてみるのも良いでしょう。

自分がHSPかどうかを知るためのチェックリスト

次の質問に、感じたままを答えてください。少しでも当てはまる場合には「はい」、全く当てはまらないか、あまり当てはまらない場合には「いいえ」と答えてください。

1 自分をとりまく環境の微妙な変化によく気づくほうだ はい・いいえ
2 他人の気分に左右される はい・いいえ
3 痛みにとても敏感である はい・いいえ
4 忙しい日々が続くと、ベッドや暗い部屋などプライバシーが得られ、刺激から逃れられる場所にひきこもりたくなる はい・いいえ
5 カフェインに敏感に反応する はい・いいえ
6 明るい光や、強い匂い、ざらざらした布地、サイレンの音などに圧倒されやすい はい・いいえ
7 豊かな想像力を持ち、空想にふけりやすい はい・いいえ
8 騒音に悩まされやすい はい・いいえ
9 美術や音楽に深く心動かされる はい・いいえ
10 とても良心的である はい・いいえ
11 すぐにびっくりする(仰天する) はい・いいえ
12 短期間にたくさんのことをしなければならないとき、混乱してしまう はい・いいえ
13 人が何かで不快な思いをしているとき、どうすれば快適になるかすぐに気づく(たとえば電灯の明るさを調節したり、席を替えるなど) はい・いいえ
14 一度にたくさんのことを頼まれるのがイヤだ はい・いいえ
15 ミスをしたり物を忘れたりしないようにいつも気をつける はい・いいえ
16 暴力的な映画やテレビ番組は見ないようにしている はい・いいえ
17 あまりにもたくさんのことが自分のまわりで起こっていると、不快になり神経が高ぶる はい・いいえ
18 空腹になると、集中できないとか気分が悪くなるといった強い反応が起こる はい・いいえ
19 生活に変化があると混乱する はい・いいえ
20 デリケートな香りや味、音、音楽などを好む はい・いいえ
21 動揺するような状況を避けることを、普段の生活で最優先している はい・いいえ
22 仕事をするとき、競争させられたり、観察されていると、緊張し、いつもの実力を発揮できなくなる はい・いいえ
23 子どものころ、親や教師は自分のことを「敏感だ」とか「内気だ」と思っていた はい・いいえ

【得点評価】
質問のうち12個以上に「はい」と答えたあなたは、おそらくHSPでしょう。しかし、どんな心理テストよりも、実際の生活の中で感じていることのほうが確かです。たとえ「はい」が1つか2つしかなくても、その度合いが極端に強ければ、あなたはHSPかもしれません。(出典:エレイン・N・アーロン著 明橋大二訳(2015)『ひといちばい敏感な子』)

ちなみにいまの私は、23個のうち19個に当てはまります。

また、こちらの外部サイトでは、質問に答えていくことであなたのHSP度合を知ることができます。質問項目が多く、質問内容ごとに程度の選択もできるので、より自分がどの程度の敏感さんなのか理解するのに役立ちます。

こちらもやってみましたが、私のスコアは(-52〜140のうち)120で、HSP度は【強】という診断結果でした。

子育てに悩んだら理解ある専門家のサポートを得よう

今まさに敏感な子どもを育てている保護者の方には、「この子は将来どうなってしまうんだろう」と思う瞬間があるかもしれません。私も両親に思わせたことがあったと思います。

ですが今、「この子はHSCという気質である」ということが分かっているだけでもかなり前進していると思います。私が子どもだった頃の時代には、知りたくても知れなかった概念や考え方が、今はあるのですから。

そして今HSCへの理解のある各分野の専門家も増えてきています。私も保育や教育の分野からHSCを知ろうとしているひとりです。

悩んでいる保護者の方には、ぜひ周りにいる理解のある人にも頼りながら、子育てをしていってほしいと思います。

HSCのことが詳しく分かるオススメの書籍

もし、HSCについてもっと詳しく知りたいと思われた方には、先に紹介したアーロン博士の本『ひといちばい敏感な子』に加えて、これらの本もオススメです。

また、今後当ブログでも、HSC当事者なりのエピソードや見解などを投稿していく予定ですので、少しでも参考になることがあれば嬉しく思います。

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(※)「障害」の表記について
当記事では、障害を個人の属性と環境との相互作用によって発生するものとしてとらえる「社会モデル」の考え方に基づき、障害の字を「障がい」や「障碍」とせず「障害」という表記にしています。障害の「害=ハンディ」は障害者自身にあるのではなく、社会の側にあるため、あえて「害」を隠さないという考え方です。